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アニュアルレポート(Annual Report)とは、企業が年度末に世界の株主や投資家、金融機関などに発信する、経営内容についてのまとめです。
これを読むと経営者の考え方や、戦略、顧客の満足度や社員の状況等、各企業の個性を理解することが可能となります。
また、長期投資を考える上で必要となる様々な情報を得ることもできる、投資家にとってはとても大事な資料です。
ところで、このアニュアルレポート、世界中の株主(英語ネイティブではない人も多い)に理解してもらうために、比較的簡単な表現で書かれている場合が多いです。 中学英語レベルの文法力でもかなりの理解が可能で、ビジネス英語を学ぶにはうってつけの題材です。
インターネットのおかげで、海外の企業のアニュアルレポートも容易に手に入るようになりました。
アニュアルレポートで経営と英語とファイナンスを学んで一石三鳥!!
Kiling three birds with one stone! (造語) を狙ってください。
今回は、アニュアルレポートに取り組む基本的なアプローチと、代表例として世界的に有名なウォーレン・バフェット氏のレポートを解説します。
英文アニュアルレポートへの取り組み方
比較的平易な英語で書かれていることが多いと言っても、アニュアルレポートは膨大(100ページ以上もザラ)なので、最初から全部読もうとするとすぐに挫折します。
お勧めのアプローチは以下です。
- 馴染みのある会社を選ぶ。
自分の会社のライバルや、自分がよく知ってる会社、興味のある業界などから対象企業を選んでください。 背景などの基礎知識があると理解の助けになります。
- 日頃から日経新聞やウォールストリート・ジャーナル、経済誌などを見て、経済用語(日英)に慣れる。
- 基本的なファイナンス、アカウンティングの英語表現を覚える。
後述する、会社経営者か株主へのメッセージ(手紙形式)は、ファイナンスの専門用語を知らなくても大筋は理解できます。さらに詳しく財務状況を理解する場合は、ファイナンスとアカウンティングの基礎的な専門用語を覚えておくと理解が進みます。
因みに、会計用語は日本語より英語の方はわかりやすくので、会計をこれから勉強する方は、英文アカウンティングにチャンレジするのもお薦めです。
- アニュアルレポートの主な成り立ちを理解し、必要な情報を効率よく把握するためのポイントをつかむ
アニュアルレポートの様式は多様ながら、概ね3つのグループにわかれます。
The Letter to the Shareholders 株主への手紙
(Message from CEO 社長からのメッセージ)
Business Review 事業報告 (会社により多様な名称・形式)
Financial Review 財務情報
ビジネス英語を学ぶという観点では、まずは一番の「株主への手紙」を読んでみることをおススメします。
一年間の振返りが、経営者からのメッセージとしてまとまっていて、その企業を取り巻く状況や、経営者の考え方を読み取ることができます。
株主からの手紙の代表例、Warren Buffettから学ぶ
株主からの手紙でとして、世界的に有名なのが、Warren Buffett氏が経営する会社、BERKSHIRE HATHAWAY INCに同氏が寄稿するメッセージです。
長期投資家として有名なBuffett氏ですが、彼の最新のものの見方、考え方が知りたいと、毎年このメッセージ(かなり長文)を熟読するビジネスパーソンが世界に大勢いるそうです。
今回は、2016年の同社のアニュアルレポートのキーメッセージを抜粋して解説します。
Warren Buffett
BERKSHIRE HATHAWAY INC. SHAREHOLDER LETTERS 2016
http://www.berkshirehathaway.com/letters/letters.html
Berkshire’s gain in net worth during 2016 was $27.5 billion, which increased the per-share book value of both our Class A and Class B stock by 10.7%.
バークシャーの2016年の純資産の増加額は275億ドルで、これによりクラスAとクラスBの両方の株式の1株当たり簿価は10.7%増加しました。
gain in net worth = 純資産の増加
per share book value = 一株当たりの簿価
By the early 1990s, however, our focus was changing to the outright ownership of businesses, a shift that materially diminished the relevance of balance sheet figures.
しかし、1990年代初めまでに、私たちの焦点は、事業の完全所有に変化し、それはバランスシートの数値の妥当性を著しく低下させる転換となりました。
outright ownership 完全所有
My regular recommendation has been a low-cost S&P 500 index fund.
私の推奨はいつでも、低コストのS&P500インデックスファンドでした。
Over time, stock prices gravitate toward intrinsic value
時間とともに、株価は本質的価値に向かって引き寄せられるものです。
gravitate = 引き寄せる・引き寄せられる
intrinsic value = 本質的価値
I have no magic plan to add earnings except to dream big and to be prepared mentally and financially to act fast when opportunities present themselves.
夢を大きく持ち、機会が到来した時に精神的にも財政的にも迅速に行動するように準備しておく以外、収益を増やす魔法の計画はありません。
earnings = 収益・利益
Our portfolio of bonds and stocks has continued in the post-1998 period to grow and to deliver us hefty capital gains, interest, and dividends.
私たちの債券および株式のポートフォリオは、1988年以降も引き続き堅調に推移し、巨額のキャピタルゲイン、利息、配当を私たちにもたらしました。
deliver = もたらす, 達成する
capital gain = 株式(資産)売却益
Those portfolio earnings have provided us major help in financing the purchase of businesses. これらのポートフォリオの収益は、我々の事業購入の資金調達に大きな助けとなってきました。
finance = 資金を調達する
American business – and consequently a basket of stocks – is virtually certain to be worth far more in the years ahead. アメリカのビジネス、ひいては株式には、これから数年実質的にもっと価値があると確信しています。
Innovation, productivity gains, entrepreneurial spirit and an abundance of capital will see to that. イノベーション、生産性の向上、起業家の精神と豊富な資本はその価値を見るでしょう。
productivity gain = 生産性の向上
Many companies, of course, will fall behind, and some will fail. Winnowing of that sort is a product of market dynamism. もちろん、多くの企業が後退し、一部の企業は失敗するでしょう。 そのような選別は、市場のダイナミズムの産物でもあります。
winnow = 選別する
Moreover, the years ahead will occasionally deliver major market declines – even panics – that will affect virtually all stocks. さらに、今後数年間は、事実上すべての株式に影響を与える, 大きな市場の下落 – パニックさえ – が時折やってくるでしょう。
market decline = 市場の下落
No one can tell you when these traumas will occur
それらのトラウマがいつ発生するかは誰にも分かりません。
trauma = トラウマ・心に傷が残るようなショック
During such scary periods, you should never forget two things:
そのような恐ろしい時期に、あなたは決して2つのことを忘れてはいけません。
First, widespread fear is your friend as an investor, because it serves up bargain purchases. まず、広範囲な恐怖は、割安に買い物ができる機会を提供してくれる、投資家にとっての友人であること。
Second, personal fear is your enemy.
第二に、個人的な恐怖はあなたの敵であること。
Investors who avoid high and unnecessary costs and simply sit for an extended period with a collection of large, conservatively-financed American businesses will almost certainly do well.” 高く不必要なコストを避け、アメリカのビジネスに大規模で保守的な投資を長期に渡って継続する投資家は、ほぼ確実にうまくいくでしょう。
いかがでしたでしょうか?
ちょっと長い文章もありますが、比較的平易な英文、決まったファイナンス用語が 使われています。
是非ご自身の興味のある会社のアニュアルレポートの最初にある、CEOからのメッセージを読んでみてください。
補足: いきなり海外企業のアニュアルレポートではなく、日本を代表する企業(日本語、英文の両方のアニュアルレポートのある)を手にしてみるのもおススメです!
ファイナンシャル・イングリッシュ(金融英語)を本格的に勉強したい方はこちらもチェックください。